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まきべ〜のおでかけ日記
いすみライフマーケット
NPO法人 いすみライフスタイル研究所
 

自分生活@いすみ

第22回
地域とのつながりを大切に、磯木さんのスイーツづくりライフ

文:鈴木康平 写真:磯木知子、鈴木康平
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『Another Belly Cakes』磯木知子さん

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「Another Belly Cakes 地域の旬素材&自家製米あめ」

こう書かれた黒板が軒先に置かれる時、市内にある民家は、ケーキショップに変身します。店の主は、今回の主人公、磯木知子さん。
千葉県内のイベント出店を中心に活躍する、フリーランスのパティシエです。 独立して2年目を迎えられたこの春、菜の花咲き誇るいすみ路を抜け、実際にケーキを作る姿を取材。この1年の振り返りと今後の活動についてお聞きしてきました。

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誰もが憧れる『カワイイ』ケーキは、「別腹」

「房総がいちごの産地だったことが、ケーキを作る上で、1番うれしかったことですね」。

取材の当日、近所の直売所で仕入れてきたイチゴを手に、磯木さんは嬉しそうに話します。
昨年2月に自家製の米あめや地元の旬素材を使った、「Another Belly Cakes」のパティシエとして独立。名前は「別腹」という意味の造語です。北は銚子、南は南房総や館山まで、県内各地のイベントに出店されています。

今回作っていただいたのは、お豆腐クリームのいちごのデコレーションケーキ。
クリームの材料は、生クリームではなく、お豆腐と、豆乳や葛粉など。乳製品や卵を使わないケーキです。

豆腐は近所の豆腐屋さんから仕入れます。
「お豆腐屋さんから聞いてケーキを買いに来た」というお客さんもいて、地元地域との関係も良好に築けてきました。
冷蔵庫から出てきた豆腐は、その上に重しを載せて、一晩かけて水切りをします。「しっかり水切りをした方が、きれいにデコレーションできるクリームになります」。 ツヤが出てなめらかになるまでミキサーにかけて、出来上がったらすぐに冷蔵庫へ。「できるだけフレッシュな状態で食べて欲しいですからね」。

続いて、スポンジのスライスに取り掛かります。取り出したのは、1センチの支え棒。同じ厚みで切りながら、ゆっくりと力を込めて離します。
「きちんと同じ厚みにスライスした方が、仕上がりがきれいに出来ます。クリームで隠れますが、ここは丁寧に」。

最後の仕上げはデコレーション。
スライスしたイチゴ、豆腐クリームを手にする磯木さん。「今回は最近気に入っているデコレーションで」。 絞り口を手に、外側から内側へ引くように絞り出します。
「時間のある時にいろんなスイーツの写真を見たりして、デコレーションの参考にしています」。そう話す磯木さんの携帯電話の画像フォルダは、ケーキの画像ばかりだそう。

こうして完成した「お豆腐クリームのいちごのデコレーションケーキ」。 今が旬のイチゴを散りばめた、色鮮やかな仕上がり。豆腐クリームはさっぱりとした甘みで、(実は)甘いものが苦手な私も、ペロリと食べることができました。

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「ものづくり」大好きな女の子が、身土不二を大切にするパティシエへ

新潟県胆内市出身の磯木さん。子供の頃から、「ものづくり」が大好きで、「おばあちゃんや親戚のお姉さんに手芸やお菓子作りを教わって、自分の手の中で出来上がっていくのが楽しくて大好きでした」、そう振り返る磯木さん。
それでも、「将来、自分がパティシエになるとは思わなかった」と話します。

初めてケーキを焼いたのは中学生の時。全く膨らまず、結果は大失敗。
「レシピに書いてあった卵を『泡立てる』の意味がわからず、『溶いた』というのが正確な表現でした」と笑う磯木さん。
「後日新しいレシピ本を手に入れて、泡立ての意味を調べて作り直しました。失敗しても『なぜ?』と興味が尽きませんでしたね」。

しかし、進学、上京、就職と時が経つにつれ、ケーキ作りとは疎遠になっていきました。
転機が訪れたのは、27歳の時。当時、派遣の事務職として働いていましたが、「何かつまらなさを感じていた」と漠然とした気持ちを抱え、ある決意を固めます。

「手に職をつけたい」。

磯木さん

そして思い出したのが、子供の頃楽しかったケーキ作りの記憶でした。そして、日中は働きつつ、夜間の製菓学校に入学しました。

製菓学校には半年間通学。そして、「基礎コースが終わったら、後は現場で学んでいきたい」、そう考えて学校を辞め、フランス菓子のお店で働きはじめました。 生地はもちろん、ソルベやソースも一から手作りの皿盛りデザートを3年ほど、ベルギーチョコのパティスリーではデコレーションケーキやチョコレート菓子を7年ほど作るなど、腕を磨きました。
そんな時、フリーライターの夫、淳寛さんと旅行で出かけたのが、ここいすみ市。ここで、今に繋がる運命の出会いを迎えます。

訪れた場所はマクロビオティックの宿、ブラウンズフィールド。
当時、取材で全国を駆け回る夫の話を聞く中で、夫婦間で移住への関心が高まっていました。
スタッフと共に囲んだ夕食の席で、「根ほり葉ほり、まるで取材のように」いすみでの暮らしを聞きました。
そこで耳にしたのが、同施設のカフェスタッフ募集の情報。 東京から近くて、夫婦の住まいとなる一軒家もある。旅行を終えて一旦、都内に戻るも、夫婦の決断に時間は必要ありませんでした。

そこで学んだ考え方、「身土不二(しんどふじ)」が、今の活動に活きていると話す磯木さん。
都内で磨いた10年間の技術と、住む土地で育まれた食材を、旬の時期に口にすることで、心身ともに健康を保てるという教えが、磯木さんの作るスイーツの原点でもあるのです。

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地域での「つながり」の大切さを知ったこの1年、2年目はもっと活発に

磯木さんの工房横には、小さな家庭菜園があります。「これがケーキの仕上げに欠かせないんですよ」そう言って指を指した先に育つのは、冬を越えた、立派な葉のレモンタイム。ケーキに添えたり、香り付けとして活躍するハーブです。
他にも、ケーキを彩るイチゴやラズベリーも栽培中。自給自足を目指しているのかと聞くと、こう返事が返ってきました。

「ちょっと欲しい物を収穫できるくらいがいい」、控えめな言葉の背景に、地域のパティシエとして駆けてきたこの1年で感じてきた、ある思いがあります。

「この街には、いろいろなことのプロがいます。全て自分でというのではなく、信頼できる方にお願いすることで繋がりが広がるし、その繋がりにこそ豊かさを感じます」。

磯木さんがケーキを販売する時に使う木製のケース。これを作ったのは、いすみ市内に住む大工さんです。ケースの装飾、土台、ケーキと共に中に置かれるドライフラワー、他にも、軒先に置かれる看板の飾りつけ、そして、取材当日、着ていたワンピースの首元に輝くブローチ。これら全てが、過去に参加したイベントで知り合った出店者さんたちが、腕によりをかけて作った作品たちです。

「仲良くなった出展者の方々が、自分のケーキを買ってくれる。私もみんなの作品を身に着けて、出店者どうし紹介し、紹介しあえる、そんな関係を築きたいと思うんです」。
磯木さんが各地のイベントなどに出店する時、その持ち物の数はとても多いそう。

「ケーキに興味がない人でも、作家さんの作品に足を止めてくれる時もあります。そこで、紹介すれば、その作家さんのブースに足を運んでくれるかもしれません。話しているうちに、ケーキにも興味を持ってくれたりすることもあります。会話のきっかけですね」。

磯木さんが地域との「つながり」を強く意識するようになったきっかけは、茂原市で「コーヒーくろねこ舎」というカフェを営む、今野もとこさん(下写真左)との出会いでした。
意気投合した2人は、カフェユニット「tomo to co(トモトコ)」を結成。各地のイベント、1dayカフェなどに一緒に出店し、精力的に活動しています。

「イベントの情報提供、他の出店者への紹介、いろんなことをしてくれました。もし一緒にやっていなかったら、私もこんな多くの関係を築けなかったと思います」。

そして魅力的だったのが、他の出店者とのつながりを大切にする姿でした。その背中に、自らが進む道が広がり、1年を迎えました。

「今年は土日両日とも出店できるようにしたいです」、そう話す磯木さん。 工房の厨房には、オーブンを1台増やし、仕込みに1日かかるというスイーツをこれまで以上に作れる環境を整えています。

2年目を迎えた「Another Belly Cakes」。 暖かい日々が増え、屋外でのイベントも増えるこの季節。磯木さんのケーキを食べに、足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

 Another Belly Cakes
電話:080-3607-9926
メール:another.belly.cakes@gmail.com
HP:http://anotherbellycakes.wix.com/rice
Facebook:https://www.facebook.com/anotherbellycakes/

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