岩船エリアはいすみ市の南、御宿との隣接する小さな港町。このエリアの象徴である、『岩船地蔵尊』は岩船漁港からほど近い海に突き出た岩場にあります。
その昔、時の中納言藤原兼貞卿は、建治元年(1275)9月、ご本尊および75柱の霊神を奉じ、遊航していました。その途中に台風に遭遇、一同船中で一心に尊像を念じたところ、しばらくして、釣師海岸に漂着し、一漁夫の助けにより上陸することが出来ました。朝になり風雨が静まると、船は大きな岩の船となり浮かび、また尊体安置を示唆する霊岩も同時に出現したので、兼貞卿はその奇瑞(ふしぎなめでたいしるし)に感じて里人と相談し、この地に堂宇を建立、これが岩船地蔵尊だと伝えられています。 今なお海上保安、五穀豊穣の守り神として、漁業者をはじめ近郊の人々の信仰を集めていると聞き、私もごあいさつをして今回の取材をはじめました。
最近では、この昔ながらの雰囲気を味わいたいと、遠方からやってくる人が増えています。バスツアーでの立ち寄りスポットになることもあるそうです。私も友人を連れていったことがありますが、その中世的な雰囲気に感動していました。 このお地蔵様では、年に一度、8月23日、24日には縁日が開催されます。地元の方々を中心にたくさんの人が集まり、23日には花火、24日には船から海へ灯篭流しを行い、人々を魅了しているそうです。
ところで、まちの人々の会話を聞いていると聞き慣れない「えーい」という言葉が。私が不思議そうな表情をしていると、「こんにちはの意味なんですよ。」と。 誰かと会うと第一声が「えーい」。岩船特有のあいさつで、これ以外にもぱっと聞いただけではわからない言葉もありました。「言っている本人たちは気がついてないけれど、“岩船語”って結構あると思いますよ」。とっても気になります。
そんな人情味溢れる港町ですが、漁業だけで生活をしている人はほとんどいません。 若い人は別な仕事をしつつ、休みの日にも海にもぐったり、釣りをしたり、漁に出たりという生活をしています。漁業一本の生活を定年後の楽しみとしている人も多いそうです。実際、宮内さんも平日仕事をする傍ら、週末は現役の海女として、海に潜り海藻などを取っています。岩船で暮らす人々のほとんどが、漁業権をもっているので、そんな生活もできるのです。
岩船エリアには、JR大原駅から、市民バス「大原巡回波花線」(平日運行)をご利用になることで行くことができます。
市民バスの運行表は、市のホームページをご覧ください。