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まきべ〜のおでかけ日記
いすみライフマーケット
NPO法人 いすみライフスタイル研究所

癒し・パワスポめぐり

第6回
四季折々の花木に癒される樹木葬の寺「天徳寺」

文章:三星千絵 写真:佐々木千穂、三星千絵 構成:大花慶子
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今回は、山田にある「天徳寺」をご紹介します。957年に創設された、1053年の歴史がある曹洞宗のお寺です。
 
お寺といえば、お墓やお葬式など、どちらかというと暗いイメージを持ってしまう私、ちえぽん。
「お寺だけど、とても面白い取り組みをしているらしい。知ったら元気になる。しかも通っている人が癒される場所だから『癒し・パワスポ』にぴったり!」という指令を受け、さっそく行ってきました。
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自然豊かな里山でのお墓参りは、ガーデニング?

天徳寺お堂地元では「源氏ホタルの里」として知られる山田地区にある天徳寺。
国道465号線から細い路地を進み、急な坂をのぼる高台からは、自然豊かな山々を眺めることができます。裏山ではひめこぶし、ハナミズキ、ライラック、季節の移り変わりとともに様々な木々が花を咲かせています。
 
ふとお堂の隣の小屋を見ると、たくさんの長靴や手袋、ハンドシャベルが並んでいます。また、何人かの方が鉢植えのポットを抱えながら楽しそうに出入りしている姿も見られます。その様子はお墓参りというより、「ガーデニング」。
 
ここ天徳寺は、墓石のかわりに木を植える「樹木葬」を8年前に、関東で初めて導入したお寺。そのため、お寺の敷地には、墓石ではなく、墓標となる美しい花木が並んでいて、お墓参りはさながらガーデニングの様相なのです。
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自然に還す「樹木葬」と精進料理付き見学会が人気

「樹木葬」とは遺骨を砕かずにそのまま土の中に埋め、花木を墓標にする方法です。骨は微生物によって分解され、自然に還っていきます。
この、自然に還す埋葬方法はイギリスなどではよく知られていますが、日本国内にも十数か所あり、年々人気が高まっています。
天徳寺でも、2カ月に一回の見学会には、関東を中心に全国から見学者が訪れ、多い時には100名程になるとか。見学料は1人1,000円で、樹木葬についての説明があり、敷地内をぐるっと案内してもらえます。

樹木葬の墓地
精進料理 また、見学会で出される昼食は、裏庭で採取された山菜を中心とした、地産地消の精進料理。
私が参加した日は、「ふき味噌田楽・出汁昆布とまいたけの佃煮・山うどの皮のきんぴら・つくしと菜花の和え物・天徳寺産竹ノ子・自家製草団子・わらびお麩昆布のお吸い物・桜ご飯」という春のメニューでした。この精進料理が目当てで来る参加者がいるのでは?と思えるほど、旬の素材を巧みに使ったおいしくて贅沢なものでした。
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「自然に還す」ことと遺族の想いに配慮

墓地内を歩くと、様々な樹木が植えられ、色とりどりの花が咲いて、まるで公園のようです。
私の家のお墓は墓石がずらっと並んでいる無味乾燥な墓地公園にありますが、ここなら森林浴ウォーキングがてら墓参りできる。それに地震で墓石が倒れる心配がない、なんて考えてしまいました。
 
天徳寺では、現在、自然環境に負荷をかけず、里山を再生することを前提に整地を進めています。
敷地内にかかっている橋もすべて釘を使わない木造で、自然に還るよう配慮。樹木葬のための花木は、寺で里山再生に適した花木を用意しています。
 
墓地の契約者は、墓標となる樹木を植える場所を選ぶことができますが、あくまで里山を保全することが目的のため、バランスが崩れてしまうような植え方はしないようにしているそうです。
木と木の間は約2mになっていて、自分の木の周りを自由に手入れができるようになっています。中にはパンジーなどを植え、頻繁にガーデニングをされている方もいます。
墓標とそのまわり
里山の墓地
外来の花を植えるのは里山保全に良くないのでは?と聞くと、「なるべく許可しています。亡くなった方が眠る土を触り、好きな花を植えることで、残された遺族の方の心も癒されるのなら、そちらを優先します」とのこと。
 
亡くなった家族を想いながら、遺族が墓標となった樹木やそのまわりの草花の手入れをする。お寺なのに癒される…その理由がわかってきました。
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「人間の死」を地域や未来につなげていく

墓標を石から樹木に変え、「自然に還す」をテーマにした天徳寺の取り組みは、まわりの地域にも影響を与えはじめています。
 
まずひとつ目が、「地域活性化」。
「樹木葬」をきっかけにいすみ市のことを知ったり、契約して遠くから通ったり、さらには、移住する人も増えてきているそうです。なるべく契約者に頻繁にお墓参りに来てもらえるよう、ホームページ上で花木の開花情報など、積極的に情報発信をしていることもあり、「墓標の木の手入れしよう」、「花が咲いたから見に行こう」と、遠くから通ってくる方が増えてきています。
 
また、「将来自分の眠る場所の近くにいたい」、「マメに樹木の手入れがしたい」と、移住した方が5組もいます。住職の二神(ふたがみ)いわく、「人は最後には、自分が骨を埋めたいと思う場所の近くに住みたがるものです。ですから、美しい場所にすれば、人はやってきます」。さらには、こうした埋葬法には維持に手がかかるため、地域の人の雇用を生み出しているのです。
天徳寺
2つ目は「里山再生」。
二神さんがこのお寺を継いだ時、心を痛めたのが、裏山の荒廃でした。
戦後の植林振興により、無理やり杉が植林されたものの、手入れがされず、荒れていく。里山が荒廃すると、土地が痩せ、流れ出る川や海にも影響を及ぼし、生命の循環の営みを不安なものにしてしまう…なんとかできないものだろうか。
 
そこで、出会ったのが「樹木葬」でした。
樹木葬ならば、荒廃した山に樹木を植えていけるし、契約者にとっても「里山再生に協力している」という喜びがうまれる。地域にとっても契約者にとってもプラスになります。
「死はだれでも通る道。だからこそ、死んだあとのことやお墓のことはだれでも一度は考える。その時、選択肢の一つにこんな埋葬方法をしているお寺があることを知ってほしい」と二神さん。
天徳寺の取り組みは、悲しみでいっぱいの遺族者の心を癒し、訪れる者を元気づけるだけでなく、美しい自然を再生させるとともに、明るい未来への橋渡しにもなりはじめています。

住職二神(ふたがみ)さん

住職二神(ふたがみ)さん 住職の二神(ふたがみ)さんは熊本生まれ。大学院で水俣病と宗教の関係性について研究をしました。
そこで知ったのは、かつては、地域のコミュニティーの場所であり、人々の心の支えだったお寺の役割が崩壊し、機能していないということでした。
もっと若い人に向けて宗教を広げ、地域の支えになりたいと思った二神さん。お寺の息子ではなかったこともあり、卒業後一度は会社勤めをし、縁あって1996年に天徳寺の副住職に迎えられます。
その後、「地域住民との距離が近く、保守的なお寺が動くことで地域が変化するきっかけになるのではないか」と、地域の人たちと一緒に活動を行っています。今は、荒れた山を整地して契約者を増やすことで収入を得て、その収入を将来のために基金として積み立てる。契約者からの収入が減る頃には、花木が育ち、公園としての収益を得るようにしていく。これからの先を見据えた、長期的ビジョンを持っていらっしゃいます。
また、天徳寺での活動の他、基金を設立し、国内外の困っている子どもたちも支援。荒れる森林の保護のため、カンボジアやインドネシアなど、他の団体と協力しながら積極的に活動をしています。「人が増えることで、産業が生まれ、雇用が生まれる。そして、お金が回って活性化していく。よいサイクルが生まれることでその地域が豊かになって行く」と考えてのことです。

 樹木葬の寺・天徳寺
〒298-0025 千葉県いすみ市山田1886
TEL 0470−66−1258(電話対応は平日9:00〜13:00)
FAX 0470−66−1261
Mail cbbqp906@yahoo.co.jp
公式サイト http://www5f.biglobe.ne.jp/~tentokuji/

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